Blog Nowhere

いつか、どこでもない場所で

第20回文化庁メディア芸術祭受賞作品展  



さて。
夏休みの思い出をつらつらと書き連ねているうちに季節は移ろい、いつの間にやら秋となりました。
秋といえば、芸術の季節。
ということで、今年から秋の開催となった文化庁メディア芸術祭受賞作品展のレポートです。



第20回目の節目となる今回は、開催時期だけではなくメイン会場も、いつもの六本木・国立新美術館から初台の東京オペラシティへと移りました。
東京オペラシティ内にあるNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)では、「Open Space 2017」なる展覧会も開催されております(てか、メディア芸術祭受賞作品展も、ICCの一部が会場になっている)。
何も考えずに見に行った僕は、全部ひっくるめて「文化庁メディア芸術祭受賞作品展」だと思ってしまいまして。
「今年は、やけに見応えあるなぁ!!」と…。
アホすぎる…。
…ということで、本来であれば別々にレポートするべきなのでしょうが、主観的には一緒の展覧会ですので、まとめてご紹介したいと思います。
例によって部門や賞の種類にかかわらず、個人的に気になった作品のみピックアップします。


jmaf2017003.jpg
Ryo Kishi 「ObOrO」

会場について最初に目に入るのが、エンターテインメント部門で新人賞を受賞したこちらの作品(照明装置だそうで)。
風に吹き上げられ、その場でクルクルと回り続ける白球。
気にはなっても、眺めるだけに留めておくのがタシナミというもの。
…と思っていたら…。

jmaf2017004.jpg
帰るときに見たら、こんなことになっていました…
欲望に忠実なガキどもお子様たちを見習い、小生も触れてみたのですが、「球」はただの発泡スチロールでした。
カギは下の、風を噴き出す装置にあるようだ。


Jmaf2017017.jpg
川嵜鋼平/中野友彦/中村裕美/橋本俊行/宇田川和樹/天野渉 「NO SALT RESTAURANT」

展示と紹介映像だけなので地味ですが、注目していただきたいのがこちら。
食材を通じて舌を電気的に刺激し、「味」を感じさせるフォークを開発。
これを使って食事すると、塩分を全く使用していなくても、「塩味」を味わうことができるそうです。
つまり、健康上の問題により塩分摂取を制限されている人であっても、「食」を楽しむことができる!!
なんとも革命的な発想、発明ではありませんか!
こういうものを「芸術」として(しかも「エンターテインメント部門」で)評価する…というのが、この「文化庁メディア芸術祭」の面白いところです。
出来ることなら体験させてほしかった。

jmaf2017018.jpg
「エレクトリック・フォーク」というネーミングもステキですよね。
ライク・ア・ローリングストーン…(いや、そういう狙いはないのでしょうが)。


さて、同じフロアの端っこには、何にも写っていないディスプレイが立っています。
ディスプレイからはかすかに音が流れてくる。
OS2017001.jpg
こいつを虫めがね越しに覗くと...


OS2017002.jpg
Ogata Hisato 「Oto-Megane」

こんな感じで、何が音を発しているのかが見られます。
こちらは、Open Space 2017の展示品です。
僕が「全部ひっくるめて文化庁メディア芸術祭受賞作品展だと思ってしまった」というのもむべなるかな。



jmaf2017006.jpg
「Alter」製作チーム 「Alter」

アート部門の優秀賞。
「生命らしさ」を運動の複雑さで実装した...とのことで、発する音などは全く意味がありませんが、精巧でヒトっぽい動きを見せます。



jmaf2017010.jpg
市原えつこ 「デジタルシャーマン・プロジェクト」

一方こちらは、エンターテインメント部門の優秀賞。
死者の口癖や仕種を再現するモーションプログラムを家庭用ロボットにインストールし、さながらデジタル時代のイタコ(?)として機能させるというもの。
ロボットは、49日間だけ故人の声で語り、動きます。
展示されている場所は離れていますが、発想は上記の"Alter"とも通じるところがある。
その反面、「死」=禁忌に触れるものなだけに、ユーモアに包まなければ出せなかったというギリギリの感じもうかがえます(故人の顔をスキャンしたマスクが、テープで留められているところとか)。



jmaf2017007.jpg
吉原悠博 「培養都市」

東京から柏崎刈羽原発まで、高圧送電線のある景色を辿って映像に収めたインスタレーション。
「培養都市」というタイトルは、「東京は、所詮は地方で作られた電力によって生かされているにすぎない」という意味を込めてのものでしょう。
ちょっと前に、青春18きっぷのポスターを集めた写真集を図書館から借りてきて眺めていたのですが、そこに収められた原野を横切る鉄道のショットには郷愁を感じるのに、田園や賑わうスキー場、白鳥が羽を休める湖の背後に巨大な鉄塔がそびえる姿をこうして切り出してみると、どこか不気味さを感じる。
その違いは何なのだろう...なんてことを考えながら眺めていました。
あと、初期日本ファンタジーノベル大賞受賞作・『鉄塔武蔵野線』を思い出したり。



jmaf2017008.jpg
Benjamin MAUS/Prokop BARTONICEK 「Jller」

ドナウ川の支流、イラ-(Jller)川の底から採取された小石を、地質年段別に分類する装置だそうです....。
結構悩んでいる(?)ような動作も見受けられ、「人がやった方が早いんじゃ?」と思ったのはナイショです。



OS2017003.jpg
evala 「See by your ears」

さて、こちらはOpen Space 2017の展示作品…なのですが、メディア芸術祭受賞作品も含め、この日体験したものの中では、コイツが一番衝撃的だったかも(形のないインスタレーションなので、解説を写真に収めるという暴挙に出ました 笑)。
真っ暗な小部屋の中で、四方八方から流れてくる音によって世界を感じるという作品。
バイノーラル録音のように「臨場感のある音」というのは、聞いたこともあるし理解できるのですが、まったく実在しない世界に音だけで連れて行かれる…というのは初めての体験でした。
整理券方式で待ち時間もそれなりにあるからか、通り過ぎてしまう人も少なくありませんでしたが、「あんたら、人生損しているぜ!」という声を、四方八方から浴びせてやりたい。
…。
※ちなみにメディア芸術祭受賞作品展は今月28日までですが、Open Space 2017は来年3月までやっているようですので、興味を持たれた方は是非。


OS2017004.jpg
Gregory BARSAMIAN 「Juggler」

ジャグラー人形の放り投げた受話器が、空中で様々なものに姿を変え、ふたたび手元に降りてくる…。
立体版パラパラマンガとでもいうべき単純なカラクリなのですが、そのアナログさにむしろ感動します。
こちらもOpen Space 2017の展示作品。



os2017005.jpg
Research Complex NTT R&D @ICC より 「振動電話 『ふるえ』」

これもOpen Space 2017の展示作品なのですが、電話機のボタンを押して、「グサッ」とか「ツン」なんていうマンガでおなじみの擬音を送り合います
相手が送ってきた擬音は、お腹まわりに装着したスピーカーから、実際の振動として伝わってくる。
これまた単純といえば単純なのですが、「マンガ大国」日本ならではの発想と言えるかも。
二人一組での体験となるのですが、一人できたお客さんは、係のお姉さんが相手してくれます。
調子にのって「ズキューン!」を連発したのですが、次のお客さんが体験するのを見ていたら、お姉さんは、スピーカーは装着せず、ボタンだけ押しておりました…。
…グサッ!


さて、メディア芸術祭本編に戻ります。
アニメ―ション部門の大賞「君の名は。」、エンターテインメント部門の大賞「シン・ゴジラ」、同優秀賞「Pokemon Go」など、ヒットしたものが順当に受賞している中、こういった場所以外ではなかなか目にする機会のない海外アニメーションもきちんと評価されており、大変興味深い(しかも今年はシアターがメイン会場内にあり、大半の作品をそこで鑑賞できます)。



Ale ABREU 「父を探して」

アニメーション部門・優秀賞を受賞したブラジルの長編アニメ。
まるで動く絵本のよう…ではありますが、少年の探究と一国の近代化の歴史がシンクロし、なかなか解釈が難しい作品となっています。




Emma VAKARELOVA 「I Have Dreamed Of You So Much」

アニメーション部門・新人賞受賞作。
フランスの詩人・ロベール・デスノスの詩に映像をつけたブルガリアの長編アニメ。
こちらは「動く抽象画」といったところでしょうか。




Arturo "Vonno" AMBRIZ/ Roy AMBRIZ 「Rebellious」

同じくアニメーション部門新人賞を受賞したストップモーションアニメ。
メキシコ革命を題材にしています。
動きはユーモラスですが、「暴力により翻弄される芸術」というテーマは実にアイロニカル。



日本では、どちらかというと「エンターテインメント」の面ばかり強調されがちなアニメーションですが、世界を見渡せば、様々なテーマ・表現手法で取り組んでいる人たちがいる訳です。
てか、日本だって、アニメーション部門で優秀賞を受賞した「聲の形」とか、よく考えるとすごいですよね。


それに比べると「ロックに政治を持ち込むな!」とか、ごちゃごちゃ言ってる日本のポップミュージックの状況のなんとちっぽけなことよ。
そういう閉鎖されたシーンでの、「お約束」を笑い飛ばすような岡崎体育の批評性、僕はキライじゃありません
(音楽としての良し悪しは別として)。


岡崎体育/寿司くん「岡崎体育『MUSIC VIDEO』」


jmaf2017016.jpg
石塚真一「Blue Giant」
そういえば、マンガ部門の大賞受賞作も音楽と密接に絡んだ作品でした。
ポップミュージックじゃないけどね。



jmaf2017020.jpg
「でっかく行け、すべて破壊しろ!!」
と、その背中は云う。



全然関係ないですけど、初台の商店街では、阿波おどりやってました~♪
jmaf2017021.jpg



にほんブログ村

category: 日用美術館

tb: 0   cm: 8

コメント

文化庁メディア芸術祭、東京に住んでいた頃は何回か行きました。
体験できるものが多くて楽しめますよね
こういうアートって、たとえば絵画を観るのとかに比べて
感覚を共有しやすいというか、共感覚みたいなところに興味をひかれました

ブルージャイアント、面白いですよ!


URL | ねこかもめ #OoLIINKE
2017/09/25 23:59 | edit

この記事、待ってました!
「振動電話『ふるえ』」はTwitterで最近見て面白いなぁやってみたいなぁと思ってたのですが、まさかメディア文化祭と同じ会場のものとは…!!

やっぱり東京は現代アートが身近というか展覧会が多いですね、京都なんかだととにかくお寺の宝物庫ひっくり返せば展覧会が出来ますから、インスタレーションなんてなかなか展示してくれない。(恥ずかしながら私が「インスタレーション」という言葉を知ったのもここ1年くらいなもので、現代アート展に参加したのも1回きりです)

東京一人旅、楽しみになりました!ありがとうございます(´∀`*)

URL | smallmouse #-
2017/09/26 01:01 | edit

ねこかもめさん

> 文化庁メディア芸術祭、東京に住んでいた頃は何回か行きました。
> 体験できるものが多くて楽しめますよね
おお、ねこかもめさんも行かれたことがあるんですね!

> こういうアートって、たとえば絵画を観るのとかに比べて
> 感覚を共有しやすいというか、共感覚みたいなところに興味をひかれました
そうなんですよね!
加えて、「世界にはホントに色々なことを考えている人がいるんだなぁ」って、うれしくなってくる。
しかも無料なのがいいですよね。
今年のアンケートに、
「有料でもいいと思いますか」「いくらならいいと思いますか」みたいな項目があったのですが、「無料だから価値があるのだ!」と書いてきました!!


> ブルージャイアント、面白いですよ!
やっぱ、面白いんですね!!
今度読んでみよっと♪
僕、マンガは全然詳しくないので、情報収集の点からもこの展覧会は貴重なのです!

URL | stick boy #-
2017/09/26 20:33 | edit

ねずちゃん

> この記事、待ってました!

見ちゃいましたか...。
予備知識のない状態で行ったほうが楽しめると思うので、ブログに書くか迷ったのですが...。


> やっぱり東京は現代アートが身近というか展覧会が多いですね、京都なんかだととにかくお寺の宝物庫ひっくり返せば展覧会が出来ますから、インスタレーションなんてなかなか展示してくれない。(恥ずかしながら私が「インスタレーション」という言葉を知ったのもここ1年くらいなもので、現代アート展に参加したのも1回きりです)

確かに、尖りすぎたものは京都には似合わない気もします(...それも偏見ですが)。
でも、お寺の宝物庫ひっくり返した展覧会も十分面白かったりするんですよね。
1周廻って、そういうものの方が尖っているように感じられたり。

現代アートといえば、今年は横浜トリエンナーレの年なので、日帰りでなければ、そちらも寄ってもらいたいところなんですけどね。
中華街でご飯食べたりしつつ(長崎の中華街を見て思いましたが、横浜の中華街は、やっぱすごいです)。


> 東京一人旅、楽しみになりました!ありがとうございます(´∀`*)

ところでねずちゃん、「メディア文化祭」じゃなくて、「文化庁メディア芸術祭」ですからね...。
師匠は、ねずちゃんが「竹橋」と間違えて「竹芝」に行ってしまうんじゃないか...とか、「新宿」と間違えて「新井宿」(という駅が埼玉にある)に行ってしまうんじゃないか...と心配しています。
道に迷ったり、お財布落したりしたら、迷わず師匠に連絡するんだよ!!
いい旅になりますように!
感想、聞かせてね!!

URL | stick boy #-
2017/09/26 20:45 | edit

>見ちゃいましたか...。
予備知識のない状態で行ったほうが楽しめると思うので、ブログに書くか迷ったのですが...。

時間がタイトなのでどれくらい時間かけてみるのか判断しかねていたので、ありがたかったです。師匠のブログはネタバレしすぎないから丁度よいですし!

>ところでねずちゃん、「メディア文化祭」じゃなくて、「文化庁メディア芸術祭」ですからね...。
>師匠は、ねずちゃんが「竹橋」と間違えて「竹芝」に行ってしまうんじゃないか...とか、「新宿」と間違えて「新井宿」(という駅が埼玉にある)に行ってしまうんじゃないか...と心配しています。

うう、、弟子はこのへんの言葉に関する頭が弱いのです・・・とうとうバレてしまった。
周囲にも「一人で大丈夫か」「迷子にならないか」「グーグルマップ先生の言うことにちゃんと従えるのか」「新幹線にのりそこねないか」と心配されております、、
でも!たぶん!大丈夫!!(根拠のない自信)
これでももう大人ですから、師匠に頼ることなく一人旅を完遂させてみせます!

感想、おたのしみに!

URL | small mouse #-
2017/09/26 22:34 | edit

ねずちゃん

> うう、、弟子はこのへんの言葉に関する頭が弱いのです・・・とうとうバレてしまった。
> 周囲にも「一人で大丈夫か」「迷子にならないか」「グーグルマップ先生の言うことにちゃんと従えるのか」「新幹線にのりそこねないか」と心配されております、、
> でも!たぶん!大丈夫!!(根拠のない自信)
> これでももう大人ですから、師匠に頼ることなく一人旅を完遂させてみせます!
>
> 感想、おたのしみに!

言葉に関する頭が弱い...というより、おっちょこちょいですよね、結構前から気づいていたけど(あ、言っちゃった 笑)
受験の時も「問題文を全部読み終える前に解き始めてはいないか」というのが一番心配でした...。
でも受験と違って、旅でのアクシデントはよい思い出にもなるもの。
帰れなくなったら、東京で師匠と末永く幸せに暮らしましょう!(おぃ
気をつけて、行ってらっしゃい!
(いや、ようこそ!か?)

URL | stick boy #-
2017/09/27 06:19 | edit

メディア芸術祭が秋に、しかもオペラシティでの開催になっていたとは知りませんでした!

ICCは行きました。
evala 「See by your ears」、これ私は入れませんでしたね…その日は平日で待ち0だったのですが暗所が苦手なもので、絶対無理だと思いました(笑)
視覚の情報なし、ヘッドフォン無し(ですよね?)の耳で体感するバイノーラルサウンド、印象的でしょうね。
楽しみたかった。。

友達と行ったので、グサッゴゴゴは大笑いしながら体感できました。
一人で行くと係員の人が相手することになるんですね。。

メディア芸術祭のほか、初台に商店街があるということも、初めて知りました。

URL | クララ #-
2017/10/26 21:45 | edit

クララさん

おおっ!
Open Space 2017、行かれたんですね!

> evala 「See by your ears」、これ私は入れませんでしたね…その日は平日で待ち0だったのですが暗所が苦手なもので、絶対無理だと思いました(笑)
> 視覚の情報なし、ヘッドフォン無し(ですよね?)の耳で体感するバイノーラルサウンド、印象的でしょうね。
> 楽しみたかった。。
それは残念。
ヘッドフォンはもちろん無しです。
音響効果だけで、狭い部屋が果てしない広がりを持った空間に感じられて...って、余計怖さを煽っているような気もしますが...。
でも、何かあったら、ボタンを押せば、すぐに係員の方が駆けつけてくれるようになっているみたいですよ...って一層怖さを煽っているような気もしますが(何かあることも想定されているというのが、ねぇ...)。


> 友達と行ったので、グサッゴゴゴは大笑いしながら体感できました。
> 一人で行くと係員の人が相手することになるんですね。。
そうなんです。
でも、係員の方はスピーカーを装着してくれないので、むしろ一人客同士で体験させてくれる方が楽しいかもしれませんよね。
まぁでも、おっさん同士だったりすると、すごく殺伐とした擬音の送り合いになりそうですが...(- -;


> メディア芸術祭のほか、初台に商店街があるということも、初めて知りました。
僕も初めて知りました。
スタバがやけにオシャレでした。入りませんでしたけど...(美味しい鰻屋があって、鰻食べて帰りました)。

URL | stick boy #-
2017/10/28 17:32 | edit

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://blognowhere.blog.fc2.com/tb.php/634-ec7fb2a2
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)