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子規堂の静かなる午後  


「...すみません、大人1枚お願いします...」
「...はいはい、50円ね...」


にゃんこを起こさぬよう、ひそひそ声で交わされるやりとり。
子規堂の静かな午後。

*****

正岡子規が最後の日々を過ごした家が台東区根岸にあるという話は先日書いたけれど、彼が17歳までを過ごした家というのが伊予鉄・松山市駅のすぐ裏手にある。本来はそこから数百メートル東にあった家屋を、正岡家の菩提寺の境内に移築してきたという子規堂は、2度焼失(うち一度は空襲)しながらも再建され、現在も一般公開されている。

この子規堂、「育った家」というだけではアピールに欠けると感じたのか(子規にまつわる施設としては、鉄筋コンクリート製3階建ての立派な博物館が、道後温泉駅前にある)「とにかく詰め込めるものはなんでも詰め込みました」という印象で、なかなかカオティックな空間となっている。

前庭には、漱石が『坊っちゃん』の中で「マッチ箱のような汽車」と評した伊予鉄道の客車が鎮座ましましており、その前には建物に正対する形で、漱石の頭像が屹立している。館内には漱石のデスマスク(レプリカ)まである。子規と漱石の交流は確かに有名だが、そもそもここは子規を記念する施設。そこまで漱石を前面に出さなくても良いのでは…などと、余計なことを考えてしまう。

直筆原稿など、オーソドックスな展示品も勿論あるのだが、子規が松山中学時代に増築されたという3畳の勉強部屋には、なぜか絶筆三句の色紙(レプリカ)が飾られていたりする(ここは青年期を過ごした地であって、終焉の地ではない)。挙句の果てには、病床の子規が死ぬまで使用していた布団やどてらの生地なども展示されており、「何もそんなものまで…」と思ったりもしたのだが、そういった端切れ類を見ているうちに、僕は興味深いことに気づいた。
子規愛用の布団や着物の生地は、ほとんどが格子柄なのである。
辛子色の地に、紺の縦縞と白の横縞が交差する掛蒲団の生地。
そこに継ぎ足して使ったという端切れは、様々な幅の紺色や灰色、薄茶色や黄色が縦横に交わり、濃淡の違う格子作り出している。
恐らく、子規はチェックが好きだったのだ!
…。

勿論、すべてが格子柄という訳でもなく、例えば秋山真之が、病床の子規のあまりのみすぼらしさを見かねて贈ったという生地は植物柄で、渡英経験もある真之らしいセンスだなぁ(なにしろアーツ・アンド・クラフツ運動の時代ですからな。案外、モリス商会製だったりして)などと思うものの、続くキャプションでは「令妹・律子さんが一度羽織裏地に使用せしもの」。
…貰いはしたものの、子規は「わしゃ、こんな花柄は好かんぞなもし」なんつって、律さんにあげちゃったのかもしれないのである。

まぁ、ただのこじつけと言われてしまえばその通りではあるけれど、古典俳諧を季語や事物、形式で分類するなど、秩序化・体系化を志向するところもあった子規は、垂直に交わる線分が作り出す幾何学模様に惹かれ...なんて想像してゆくのは、なんだかちょっと楽しい。

「違うよ、子規は水玉模様が好きだったんだよ」「いやいや、彼こそはボーダー男子の先駆けだったんだぜ」なんていう情報をお持ちの方がいたら、教えてください(←

…恐らくはサービス精神が旺盛であるが故にこうなってしまったのだろう混沌に身をまかせるうちに、見学者の思考も混沌としてくる(...決して、秩序化・体系化されない 笑)子規堂、松山を訪れた際は、忘れずにcheck it out!
...。

にゃんこもいるよ!(←どこの観光ガイドにも載っていない貴重な情報!


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初めての町で道に迷わぬための50の方法  

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あの~、この辺に秋山好古のお墓があるって聞いてきたんですが、どこだかわかります?

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「あっち」
どうもありがとう!


初めての町で道に迷いそうになったら、猫に尋ねるといい。
案外、親切に教えてくれるものですよ ^^


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明治壱四八年 睦月ノ幻影  


夜明け前、汽笛の音で目覚めると、玄関の前で蒸気機関車が待つてゐた。

疲れた体と寂しい心がチケツト。
乗り込むとすぐに、汽車は雲の上まで舞ひ上がつた。

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車室内は座敷になつてゐて、景色を見るのに飽きたら、ごろりと横になることもできる。
昼時分には、鍋焼きうどんが運ばれてきた。
訊けば、機関車のボイラの余熱で作られたものだといふ。

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熱々のうどんをすすりながら、カタコト揺られてゐるうちに、汽車は大きなお城のある町に辿りついた。

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美女たちに案内されるまま連れて行かれたのは...(...書いてゐて、実に虚しい)

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浮世の穢れを洗ひ流し、積年の憂ひをも忘れさせるといふお湯屋!
汚れつちまつた悲しみも、おろしたて同様ぴかぴかになるさうだ。


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さつそくお風呂をいただいた後...

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通された座敷では、学生時代の友人・夏目が待つてゐた。

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お膳が運ばれ、すぐに宴が始まる。
話題は専ら、共通の友人・正岡のことだ。


お酒も進んだせいか、その後のことはあまり記憶にないのだけど、東の空がしらじらと明け始める頃、周囲の人達がなんだか急にそわそわし始めたやうに感じられたのだけは覚えてゐる。

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気が付くと僕は駐車場に横たはつてゐて、にやんこが2匹、不思議さうにこつちを眺めてゐたのさ。


※記憶混濁につき、事実と異なる記述も多々ございます。
坊ちゃん列車はお座敷ではなく、勿論うどんも供されません。
また、道後温泉本館は銭湯であり、宿泊したり食事を取ったりはできません...。



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木守柿  



木守柿落ちて猫啼く横町かな


木守柿は冬の季語、「猫啼く」から連想される猫の恋は言わずと知れた春の季語で、冬から春への季節の移り変わりを詠ってみた...というのは大嘘で、「季重ね」な上に「季違い」というマズい句の典型になりました…w
ちなみに元ネタは、正岡子規の「柿落ちて犬吠ゆる奈良の横町かな」という句。


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category: 写真集 「The Cats Are Alright」

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Everything Flows  

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気にすることないって。
結局、すべてはただ流れ、漂っているだけなんだから。


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エヴリシング・フロウズ  



『ウエストウイング』('12)で主人公の一人であったヒロシは、中学3年生になった。

2年の時つるんでいた仲間とは、クラスが別れてしまった。
また人間関係を一からやりなおさなければならないと思うと、実に面倒だ。
小学生の頃から絵を書くことが好きだったが、去年、地味な同級生に圧倒的な才能を見せつけられてから、すっかり興味を無くしてしまった。
月火木金は、6時半から10時まで塾。
腹を空かして帰ってくると、おかんが間断なく話しかけてくる。
まったく、ため息しか出やしない。

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category: 本とその周辺

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Xの地平  

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時間の経過をxとし幸福の量をyとすれば、y=∞となるのは、ただx=0の時だけなのだと思う。
おかしなことに、それでも我らは、xの地平を見つめずにはいられないのだ。


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